日々の仕事やタスクに追われて、気づけば頭の中もスケジュールも「パンパン」になってしまうこと、ありますよね。そんなお疲れモードの私たちのガードをゆるっとこじ開けて、一度見たらどうしても脳裏に焼き付いて離れない、不思議なテレビCMが話題を呼んでいます。
それが、日清食品グループの「完全メシ BREAD」のCM「完全メシパーン 篇」です。
このCM、お笑いファンならずとも思わず画面を二度見してしまうような、とてもユニークな構造をしています。バックに流れるのは、ピン芸人・ZAZYさんの大人気リズムネタ「きぬえにパン」の、あの独特なデジタル音とフレーズです。
- 出演:津田篤宏(ダイアン)・森山未唯
- 元ネタ:ZAZY「きぬえにパン」
- 商品:日清食品グループ「完全メシ BREAD」
仕事と家事でパンパンになった津田さんに、森山さんが優しく、だけど容赦ないスピードで完全メシパンを口へと詰め込んでいく。ZAZYさんのスタイリッシュな歌に乗せて、ダイアン津田さんが必死にパンを頬張り、最後はお馴染みの「ゴイゴイスー!」へとなだれ込む。
一見すると、情報量が多すぎてクスッと笑ってしまうお祭り騒ぎのようですが、実はここには、私たちの心を自然と掴んでしまう日清食品グループならではの優しい心理トリックが隠されています。今回は、この異色コラボが持つ魅力について、少し紐解いてみたいと思います。
どこかで聞いたあのリズム。脳がホッとする「お馴染み感」の正体
ZAZYさんの「きぬえにパンパン、レッツ絹江にパンパン」というネタのフレーズは、SNSやテレビで見聞きして、すでに多くの人の頭の中に心地よく残っているメロディです。
心理学の世界では、人間は「すでに知っているリズムやパターン」に触れると、脳が余計なパワーを使わずに情報を理解できるため、無条件でリラックスして、好意的に受け入れやすくなるという「認知的流暢性」と呼ばれる心の仕組みが知られています。
このCMの上手なところは、商品の凄さ(栄養がパンパンに詰まっている)を伝えるために、全く新しい音楽を用意したのではなく、みんなの耳に馴染んでいるZAZYさんの「パンのお歌」をそのままベースに選んだ点にあります。
最初の1秒で、テレビの前の私たちは「あ、あの楽しいネタだ」と心理的なハードルを下げて、すんなりとCMの世界観に引き込まれてしまうのです。
完璧な計算が生み出す「心地よい裏切り」とギャップの魔力
しかし、このCMの本当の凄みは、その「安心感」のすぐ後にやってくる「強烈なギャップ」にあります。
耳が「あ、ZAZYのネタだな」と認識した瞬間、目に飛び込んでくるのは、ピンクの衣装を着たシュールな世界観ではなく、必死の形相で次々とパンを食べさせられているダイアン津田さんの生々しい姿です。
人間は、自分の頭の中にある「きっとこうなるだろう」という予測が心地よく裏切られたとき、眠っていた注意力が一気に跳ね上がり、その対象を強く意識してしまう生き物です。これを心理学では「スキーマ不一致効果」と呼びます。
デジタルで洗練された音の心地よさと、必死にパンを食べる津田さんの泥臭いほどの熱量。そこに「名探偵津田」を思い出させる森山さんとの絶妙な空気感が加わります。
「すごいパン」のすごさを表現するために、津田さんの代名詞である「ゴイゴイスー(すごい)」へと綺麗に着地させるストーリー。この完璧に計算された楽しげなギャップがあるからこそ、私たちはテレビの前で思わず手を止めて、画面に見入ってしまうのです。
理屈抜きのエネルギーが、私たちの心をポジティブにする
投資でもビジネスでも、私たちは普段、ついつい難しい数字やロジックで物事を考えてしまいがちです。しかし、このCMが教えてくれるのは、理屈抜きのエネルギーが持つ圧倒的なパワーです。
ダイアン津田さんの魅力は、見ている側まで元気にしてしまうような「全力の感情表現」にあります。彼が必死にパンを詰め込まれ、最後に見せる感情の爆発は、テレビ画面を越えて私たちの本能に語りかけ、理由のない楽しさを届けてくれます。
「スタイリッシュな音」と「原始的なパッション」、 shadow して「二人のストーリー性」。本来なら交わるはずのなかった要素がギュッと15秒に濃縮されたとき、私たちの脳は難しい説明をすべてスキップして、とりあえず「なんだか凄いものを見た」「楽しいな」というハッピーな感情を商品と結びつけます。
これこそが、単に33種類の栄養素を真面目に解説するだけでは絶対に届かない、消費者の心に直接寄り添う形の優しいブランドの伝え方(感情のアンカリング)なのだと感じます。
結び:パンパンな毎日に、ちょっとしたユーモアの余白を
ZAZYさんのフォーマットの中で、ダイアン津田さんのリアルな熱量が爆発する、日清「完全メシ BREAD」のCM。
日清食品グループが昔から得意としている「一見カオスに見えて、お笑いやカルチャーの最先端を確実に捉える」という広告手法は、変化の激しい令和の時代において、常に新しく、私たちをワクワクさせてくれる企業というイメージを優しく形作っています。
現代をスマートに生きようとするビジネスパーソンは、いつも効率や正論を求められがちです。でも、そればかりだと心がすり減って、いつの間にか津田さんのようにパンパンになってしまうこともありますよね。だからこそ、こうした「理屈抜きでただただ面白いもの」に、私たちはフッと救われるのだと思います。
たまには、あの楽しいカオスの罠に身を委ねて、「なんで津田さんがパンを食べさせられてるんだ」と笑い飛ばしてみる。そんな風に、日常の混沌をそのまま面白がれる心の余裕こそが、不確実な令和の時代を機嫌よく、そしてタフに生き抜くための、一番の完全栄養(サプリメント)なのかもしれません。今夜はあの楽しいリズムを思い浮かべながら、肩の力を抜いてゆっくり休みませんか。
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